競馬史に新たな名勝負が刻まれた。23日に東京競馬場で行われた牝馬クラシック第2弾「第71回オークス」は、1番人気アパパネと5番人気サンテミリオンが直線で一騎打ち。互いに譲らず、中央競馬G1では史上初の1着同着となった。アパパネは桜花賞と合わせ、史上12頭目の牝馬クラシック2冠を達成。サンテミリオンに騎乗した横山典弘騎手(42)はオークス初V、管理した古賀慎明調教師(44)は、開業6年目でうれしいG1初制覇となった。両馬優勝の快挙に、スタンドを埋めた6万観衆も、温かい拍手を送った。
雨中の一騎打ちの果てに、誰も予想できない結末が待っていた。G1史上初の1着同着。12分間の長い写真判定の末、検量室の着順を示すホワイトボードの1着欄に、アパパネの17、サンテミリオンの18が書き込まれると、検量エリアを埋め尽くした大勢の関係者、報道陣から自然と大きな拍手がわき起こった。
中団で折り合ったサンテミリオンをマークする形でアパパネが続く。迎えた直線。ほぼ同じタイミングで仕掛けた2頭が並んで伸びる。先に先頭に立ったのはミリオン。だが、外から馬体を併せたアパパネが、いったんは前に出る。ミリオンも負けずに内から伸び返す。蛯名と横山典。関東を代表する名手2人が、死力を尽くしてゴールに飛び込んだ。勝ったのはどっちだ…。
脚色はミリオンが勝っていた。先に引き揚げてきたアパパネの蛯名は「負けたと思った」と敗戦を覚悟。いったんは脱鞍所の2着馬が入るスペースに馬を入れようとするが、周囲に促され1着スペースに入る。遅れて戻ってきたミリオンに残されたのは2着スペース。横山典は首をかしげながら馬を収めた。「勝っているはずだ…」。
両馬優勝が告げられると、検量室に集まった両陣営が、肩を抱き合い、固い握手で健闘を称え合った。先にお立ち台に立った蛯名が、横山典を呼び寄せる。「負けなくてよかった。距離とか外枠とか、いろいろ言われたが、いい意味で裏切ることができた。どっちも勝者。感動した」。安どの表情を見せた蛯名に対し、横山典は笑みを浮かべてインタビューに応じた。「同着だろうがG1を勝つことは本当に難しい。2人で一生懸命やった結果。素晴らしい」。最後は互いに「おめでとう」と叫び、抱き合って喜びを分かち合った。
アパパネの国枝師はG1・8勝目。慣れているはずの優勝セレモニーにも「こんな経験は初めて」と興奮を隠せない。「馬にありがとうと言いたい。歴史に名前が残ってよかったと思う」。一方、ミリオンの古賀慎師はG1初勝利。「同着が決まった瞬間は頭が真っ白。胸がいっぱい。実感がわかない」と、正直な感想を口にした。
女王の座を分け合った2頭は、秋のラスト1冠・秋華賞(10月17日、京都)で再び激突する。大観衆を興奮と感動の渦に巻き込んだ「世紀のデッドヒート」の決着は、秋に持ち越された。
◆アパパネ 父キングカメハメハ 母ソルティビッド(母の父ソルトレイク)牝3歳 美浦・国枝厩舎所属 馬主・金子真人ホールディングス 生産者・北海道安平町ノーザンファーム 戦績7戦5勝 総獲得賞金2億9945万8000円。
◆サンテミリオン 父ゼンノロブロイ 母モテック(母の父ラストタイクーン)牝3歳 美浦・古賀慎厩舎所属 馬主・吉田照哉氏 生産者・北海道千歳市社台ファーム 戦績5戦4勝 総獲得賞金1億6774万1000円。
▽JRAの写真判定 キャビネサイズの判定写真をもとに決勝審判員3人の合議制で決定され、全く差が認められない場合に同着となる。判定は肉眼で行われ、判定写真の拡大などは行わない。ちなみに、昨年は1年間で3453レースが行われ、1着同着は2件。08年は3件だった。
5月24日7時2分配信 スポニチアネックス
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