今年の菊も夏の上がり馬が主役だ! JRA3歳クラシック三冠レース最後の一冠、第71回GI菊花賞が24日、京都競馬場3000メートル芝で開催され、川田将雅が騎乗した7番人気の伏兵ビッグウィーク(牡3=長浜厩舎、父バゴ)が優勝。道中3番手追走から早めに仕掛けて先頭に立つ積極策で、断然1番人気の武豊ローズキングダム(牡3=橋口厩舎)を撃破する金星を挙げた。良馬場の勝ちタイムは3分6秒1。
同馬はJRA通算10戦4勝、このGI勝利がJRA重賞初勝利となる。春のクラシック不出走馬の菊花賞戴冠は、2008年オウケンブルースリ、09年スリーロールスに続き3年連続となった。
また、騎乗した川田は菊花賞初勝利で、JRA・GIは2008年GI皐月賞(キャプテントゥーレ)以来2年ぶり2勝目。同馬を管理する長浜博之調教師も同レースは初勝利となり、GI皐月賞(2001年アグネスタキオン)、GI日本ダービー(2000年アグネスフライト)を含め、史上11人目の牡馬クラシック三冠完全制覇を達成した。JRA・GIは08年エリザベス女王杯(リトルアマポーラ)2年ぶり7勝目となる。
一方、バラ一族悲願のクラシックVと王座奪回を目指したローズキングダムは、猛然と追い込むも1馬身1/4差届かずダービーに続き2着惜敗。さらにクビ差の3着には幸英明騎乗の13番人気ビートブラック(牡3=中村均厩舎)が粘りこみ、3連単は33万8840円の波乱決着となった。
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淀の菊は2010年も波乱。“1強”ローズキングダムが主役のまま、すんなりとは幕が下りなかった。
下剋上で一躍、主役交代をやってのけたのは25歳の若武者・川田が駆る7番人気の伏兵ビッグウィーク。GI7勝馬ウオッカも輩出した名門カントリー牧場出身、7月の阪神でようやく未勝利を脱出すると続く小倉で連勝し、トライアルGII神戸新聞杯3着で優先出走権をゲットした、いわゆる“夏の上がり馬”だった。
「未勝利を勝つのに時間がかかった馬だけど、そこを勝ってからレース内容も徐々に良くなっていった。ダービー1、2着馬は強いと思っていましたが、馬の状態がいい中でなんとしても菊花賞に使いたかったんです。好調さがきょうの結果となって出てくれたんだと思います」
史上11人目の牡馬三冠トレーナーとなった長浜調教師は、抑えきれない笑顔をたたえながら“勝因”を振り返った。
そして、馬の好調さをレースで最大限に引き出した殊勲の立役者こそ、未勝利を勝ってからの4戦すべてで手綱を握っている川田。「瞬発力では分が悪い。持久力勝負に持ち込めば」――。菊花賞を勝つために組み立てられた綿密かつ大胆な騎乗は、結果は3着ながらも内容としては完敗だった前走の神戸新聞杯での経験を経て、生まれたものだという。
「前走も抜群の脚で伸びてくれて、自分の中では勝ったかと思ったんですが、1、2着馬(ローズキングダム、エイシンフラッシュ)にアッと言う間に置いていかれてしまった。だから、今度は早めに仕掛けて持久力の勝負に持ち込めば、と。ただ、初めての3000メートルで距離がもつかどうかはやってみなければ分からなかったので、そこはバクチでしたね」
大逃げを打ったコスモラピュタ、離れた2番手カミダノミを壁にする形で道中は3番手をじっくり追走。「とにかくこの馬のリズムで気分良く行くのが一番」と川田はマイペースに専念し、ビッグウィークも行き過ぎないようグッと我慢。まさに“自分のリズム”でラップを踏んでいく。
迎えた2周目の3コーナー手前でカミダノミを飲み込むと、坂の下りを利用して一気にスパート。直線入り口に入ってもコスモラピュタとの差はまだあったが、「勢いをつけていった時にこの馬もグッと伸びてくれて、“これなら!”と思いました。前は止まるだろうと思っていたので」と、その言葉どおり、ラスト200メートルを切ったところで堂々の先頭に躍り出た。
残り100メートルを通過し、外からは1頭、まるで違う勢いで武豊ローズキングダムが飛んでくる。だがそれも「長くいい脚を使うところ、最後まで諦めずに頑張ってくれるところ」と川田が挙げた長所をビッグウィークは存分に発揮。ついにセーフティリードのまま、栄冠の菊のゴールへと先頭のまま飛び込んだのだった。
「未勝利戦から色んなことを覚えてくれて、神戸新聞杯は3着に負けましたけど、収穫がありましたし、それをGIで生かすこともできた。そしてこんな大舞台で頑張ってくれて、本当にすごい馬です」
ビッグウィークを称えた川田はまた、自身に対してさらなる反省と自戒の意も込めて、こう続けた。
「スプリンターズステークスでは本当に多くの方々に迷惑をかけました。その迷惑の大きさというものを痛感しましたし、こうしてきょうジョッキーとしてまたレースに乗せていただいているありがたさも感じています」
秋のGI開幕戦となる10月3日のスプリンターズS。川田はダッシャーゴーゴーで2位入線しながらも、斜行により4着降着。川田が振り返ったように、関係者、ファンに大きな迷惑をかけながら、自身は開催4日の騎乗停止処分を受けた。そして、その処分が明けた今週、いきなりのビッグレースV。最高の“出直し”のもと、関西の次代を担う若手はこの1勝だけにとどまらない活躍を力強く誓った。
注目の次走に関して、長浜調教師は「レースの直後なので、そこは未定です」と即答。6月から休みなく6走も走ってきただけに、GIジャパンカップ(11月28日、東京2400メートル芝)、GI有馬記念(12月26日、中山2500メートル芝)のレース名は口にしなかった。
しかしながら、ダービーの1カ月後の7月初旬にようやく初勝利を挙げたように、まだまだ見せていない底と成長力を感じさせる遅咲きの花。今度は皐月賞馬ヴィクトワールピサ、ダービー馬エイシンフラッシュの打倒、そして古馬トップとの直接対決……今後の秋競馬、また来年へと続く競馬シーンを盛り上げてくれる1頭になっていくことは間違いない。
スポーツナビ 10月24日(日)18時49分配信
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