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【赤字のお仕事】
今年10月初め、中央競馬では史上初めての無敗の三冠馬、シンボリルドルフが死んだときのこと。名馬の死ゆえ、複数の紙面用に記事が出稿され、それをチェックしていたら、「(シンボリルドルフの馬齢は)30歳で、人間で言えば100歳前後の『長寿馬』だった」(社会面)、「一般的に馬の30歳を人間の年齢に換算すると120歳」(運動面)と、人間でいえば二十前後も「没年齢」がずれてしまいました。本当はどのくらいの「長寿」だった? 競走馬の年齢は生まれた年を0歳とし、以降年が改まる度(1月1日)に、誕生日に関係なく1つずつ加齢します。この方式は2001年からで、それ以前の日本では生まれた年を1歳とし、以降1つずつ加える方法(数え年)でした。競馬の国際化で交流・取引が活発化し、国によって馬齢の数え方が違っては混乱しかねないため、「国際ルール」に合わせたという経緯があります。 ところで、人間の年齢に「換算」する際、日本の旧馬齢のときは「馬の年齢×4」が一般的で、旧4歳(現3歳)馬の頂点のレース「ダービー」「オークス」は、人間換算で「16歳」ごろとされていました。高校野球やバレーの全国大会に出場するくらいの年齢といわれれば、なるほど、と納得しそうです。 一方、競走馬は引退した後、優秀な牡、牝馬なら種牡馬、繁殖生活に入ります。牝馬は、10歳を超えてからも子馬を産むので、4掛け換算だと40を過ぎてからの高齢出産だらけになってしまう。また現馬齢に当てはめると、3歳×4=12歳!で「ダービー」などのGIレースを迎えることになり、この「4掛け換算」にはしっくりこない面もあります。 馬産地では、馬は3歳までの成長スピードが特に速いので、1、2、3歳をそれぞれ人間の6、12、17歳とし、4歳以上の馬については、1年につき3倍したものを足していく(3つずつ加齢)という計算式もあるそうです。馬の平均寿命は25歳で、この換算に当てはめると83歳ぐらい。このほうが、人間の実感に近いかもしれません。ルドルフもこれに従えば、「98歳」。立派な「大往生」ですね。 この2つの記事の「不整合」については、出稿記者に相談し、「100歳前後」という表記に落ち着きました。校閲記者にとって、同一の話題について書かれた記事の整合性を調べるのも重要な仕事です。記事を比べて矛盾した点がないか、限られた時間でチェックしなければなりません。 ベテラン校閲記者になっても、「馬齢を重ねただけ」と言われず、「馬脚を現す」ことのないよう、励まなければ。 産経新聞 11月19日(土)13時2分配信 PR |
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